失われた債務整理を求めて

債務整理とは何か?

夫の裏切り1【白い封筒と無言電話】

夫は宅配のドライバーです。
近頃は共働きのご家庭も多いですから、必然配達時間が遅くなり、帰宅の時間が深夜に及ぶことは疑う原因にはならないと思っていました。
お中元やお歳暮の時期はもっと遅くなることも暫々で、私の両親の近くに住みたいという私の希望で夫の職場からは随分と離れた場所に家を建てましたから「今日は疲れたから、会社の近くのネットカフェで泊まってくる」という日もあります。
私のために職場から家が遠くなってしまったのですから「申し訳がない」という気持ちも強く、それに対しては何も言えませんでした。

そんなある日、郵便受けに何も書いていない封筒が入れられていました。
「なにかのDMかしら」と封筒を破ると「イタイ!」指に痛みが走りました。
指を見ると何かで切ったような傷があり、赤い血が流れていました。
封筒には剃刀の刃が仕込んであったのです。
「誰がこんな悪戯を。。。」
私は不安になってしまいました。
その日帰ってきた夫にそれを話すと「子供の悪戯だろう」と打合ってくれません。
「疲れているんだからそんな話やめてくれよ。俺だってこんなに疲れたくはないんだぞ。だれの所為だと思ってるんだ。」
そう言われてしまうと私も負い目がありますから、それ以上は言えません。
夫はさっさと寝室へ行き、寝てしまいました。

その日を境に無言電話も増えました。
無言電話ばかりではありません。
電話口で延々とお経のような不気味な声を聞かされることもあります。
剃刀入の封筒は、あの後2通届きました。
「警察に言おうかしら。。。」そう言うと、夫は「今に相手だって飽きるだろう。悪戯に決まってる。」そう言います。
その態度が何故か心に切っかかり「アナタなにか心当たりない?」と訊くと夫は急に豹変し「お前の方こそなにかあるんじゃないのか!」と怒鳴りだしました。
「俺にどうのこうの言う前に、自分の仕事でもしてろ!風呂だって汚れてたぞ!」
そして「警察に言う必要はない。これ以上面倒はゴメンだ!」そう言い捨てると、また寝室へ入っていってしまいました。
その態度に不自然さを感じて、私は「女がいるんじゃないかしら。。。浮気?」そんな疑いを夫に持ち始めました。

 

 


ある日、夫の仕事着を洗おうと夫が脱ぎ捨てた仕事着のポケットに手を入れると、ぐしゃぐしゃに丸められた一枚の紙が出てきました。
貯蓄型の保険から契約者貸付をしたことを示す紙でした。
利用可能額の残額を見ると、随分と引き出しているのでしょう、殊の外少ない。
「なんでこんなにお金が必要なの?」
ますます疑いは膨らみます。
夫にこれを見せて訊こうかとも思いましたが、本当のことを言うとも思えません。
そんな時「ひとりで悩まないで」という文字が目に飛び込みました。
フリーペーパーの探偵事務所の広告でした。
一晩悩みました。
主が浮気をしているなどと考えたくはありません。
となりのベッドに寝ている夫は、イビキをかいていました。
こんなに疲れてるんだもの。。。疑ってはいけないわよね。。。
「け。。。い。。。」
夫の寝言が聞こえました。
人の名前を呼んだ気がします。
私の名前ではありません。
血の気がサーっと引くのが自分でもわかりました。
ガクガクと体が震えはじめます。
夫が私の知らない女の人の名前を呼んだ。。。?
私は寝られずに、そのまま朝を迎えました。